収穫後の精選加工処理について
収穫されたコーヒーチェリーを、生豆に精選処理する方法は、
大きくわけて2つあります。
ナチュラル(自然乾燥式・非水洗式・Dry process)
収穫したチェリーを、そのまま、まるごと乾燥させ、
果肉とパーチメントを一度に脱殻する方法です。
高湿度または降雨が多い地域や、
乾燥場のスペースがない地域では採用できません。
収穫後すぐに乾燥場に運ばれ、スクリーン選別や風力選別、
比重選別といった粗選別を行います。
この粗選別は、農園によっては行われないことも多いようです。
その後、乾燥のために広い場所に広げられて、
定期的に熊手などで混ぜられます。
収穫ピークの時期は、
チェリーを広げるための充分なスペースを確保しなければ、
チェリーが厚い層の状態で積まれることになり、品質に悪影響を及ぼします。
夜間は濡れたり、湿気を吸ったりしないように積み上げられて、
覆いでカバーされます。
乾燥期間が長すぎる場合や、均一に乾燥されなければ、
発酵や腐敗のリスクがあるため、乾燥の最終段階で、
機械(マシンドライ)が使われることもあります。
摘みたてのチェリーは70%程度の水分含有量ですが、
乾燥されたチェリーは、15~30%まで落ち、
処理の最終段階では、最大でも12%程度になります。
この伝統的な方式では、定期的に攪拌するためのコストや、
天候に左右される問題もありますが、
果肉や粘液質に含まれる糖分が、生豆に浸透していき、
ボディと甘みに優れた品質になります。

ウォッシュド(水洗式・Wet process)
収穫したチェリーを、水に満たされたタンクの中で比重選別し、
チェリーと異物を選別します。
それらをパルパーにかけると、
ミューシレージ(粘液質)に覆われた状態のパーチメントになります。
発酵槽と呼ばれるタンク内で、酵母や微生物などを利用して、
ミューシレージを取り除きます。
ミューシレージ除去後のパーチメントを水路できれいに洗って、
次の乾燥工程に移されます。
外皮や果肉の発酵によるダメージを避けるため、
収穫後すぐに水洗処理場に運び、精選処理する必要があります。
きれいな水がふんだんに使えることが、
水洗式に欠かせない重要な要素です。
充分にきれいな水の供給ができない地域では水洗式は採用できませんが、
徐々にきれいな水が入手困難になってきています。
上流にある処理場が排出する汚水で、
下流の処理場が業務できない状態になることもあります。
汚水の原因は、発酵した果肉や粘液質などを処理した廃棄物です。
1.水による比重選別
収穫されたチェリーは、まず大きなタンクに流し込まれ、
底に沈む重いチェリーと、過熟して乾いたり、
腐敗して水面に浮かんでくるチェリーや、
枝葉やゴミなどの不純物を選別します。
この段階では、まだ完熟チェリーと未成熟チェリーを
完全に選別することはできません。
2.果肉除去
果肉除去機(パルパー)の構造には、
おろしがね状の表面をしたドラムが回転して、
金属面にチェリーを押し付けて果肉をはがすドラムタイプと、
歯がついた2枚の隣り合ったディスクの間で圧迫するように
果肉をはさむディスクタイプがあります。
機械を清潔に保たなければ、以前の処理で残ったままの果実が発酵して、
新しい果実に混ざってしまい、腐敗臭や発酵臭を放つ汚染につながります。
この工程で、完熟チェリーは果肉を取り除かれて、次の工程に進みます。
未成熟な硬い果実は、パルパーで果肉が取れにくいため選別されます。
このように、水洗式は最初の段階で
完熟チェリーと未成熟、過熟チェリーを選別することができ、
精製度を高められるのが利点です。
3.発酵槽
果肉を除去した後、そのままミューシレージ(粘液質)がついた状態で、
発酵槽(ファーメンテーション タンク)といわれる、
酵母やバクテリアの働きでミューシレージを分解する、
大きな水槽に入れて浸けおきされます。
発酵させることによって、ミューレージをはがしやすくします。
発酵中、温度が上昇するため、
均一な発酵と40℃以下を保つよう頻繁に攪拌されます。
発酵は、気候や品種、熟度、量によって異なりますが、
6時間から40時間かけて行われます。
この発酵工程がきれいな水で行われなかったり、
時間をかけすぎたりすると、オフフレーバー(好ましくない匂い)といった、
重大な品質低下を引き起こすことになります。
発酵工程は、豆が粘液質を失い、表面がざらざらしてきたら、
経験に基づいて完了します。
この発酵の過程で、酢酸を増加させる酵素反応が起こり、
水洗式コーヒーに特徴的な、香り高い酸味、フルーティな酸味が生まれます。
4.水洗
発酵工程が完了すると、すぐに水路に送られ、洗われます。
水路の水は常に流され、熟した豆は水路の底にとどまり、
フローター(浮遊パーチメント)と呼ばれる欠点豆は、
水面に浮かんで流され、取り除かれます。
ミューシレージがきれいに洗い落とされて、
パーチメントの状態になります。
セミウォッシュド(半水洗式)
果肉を除去した後のミューシレージの除去を、
発酵槽を使わずに機械で行う方法です。
遠心分離機やミューシレージリムーバーなどが使用されます。
短時間で容易に作業ができるため品質管理がしやすいこと、
省スペースであること、また、水の使用が少ないため、
環境に与える負荷が少ないことが利点です。
外見上はまったく同じように見えますが、
発酵処理をしないことによって酸の生成が妨げられ、
ウォッシュドコーヒーよりも香味がやや劣る結果をもたらす場合があります。
パルプド ナチュラル
果肉を除去した後、ミューシレージがついた状態の
パーチメントを乾燥させる方法です。
発酵や腐敗などの注意が必要ですが、
ミューシレージに含まれる糖分が浸透して、甘みが生まれます。
水による比重選別と、パルパーにかけた段階で
完熟チェリーと未成熟チェリーが選別されるため、
ナチュラル式よりも精製度が高くなる利点があります。
おもに、収穫時に降雨が多く、チェリーを乾燥させるのが難しく、
水洗のための大量の水が確保できない地域で採用されています。
果肉がついたままのチェリーをまるごと天日で乾燥させるのに
10~15日ほどかかるのと比べて、
ミューシレージのついたパーチメントを天日乾燥するのは、
3日ほどで済むため、ナチュラル式で発生する
発酵のリスクを減らすことができます。
精選後の乾燥工程について
収穫直後のコーヒーチェリーは、60~80%、
パーチメントで50~60%の水分が含まれています。
乾燥工程で、10~12%程度まで減少させます。
不十分な乾燥や、乾燥速度が遅すぎる場合は、
発酵や細菌によるダメージを招き、過度な乾燥、急激な乾燥は、
割れ、欠け豆の増加につながるとともに、芳香成分を失ってしまいます。
天日乾燥(サンドライ)
収穫したチェリーを、乾燥場(パティオ)に広げて日光で乾燥します。
乾燥場に広げたチェリーまたはパーチメントの層の厚さ、
気温や湿度、日光の強さや通気性などによって
乾燥は3日から20日にわたって続きます。
収穫期に日射量が不足する場合や、
不安定な場合は、品質に悪影響が出てきます。
乾燥場が、土でできている場合は、土壌細菌におかされるリスクがあるため、
土の上にプラスチックシートを敷くか、
コンクリートやレンガでできているのが理想的です。
棚の上に広げて通気性をよくする方法もとられます。
いずれの場合でも、できる限り均一に乾燥するために、
1時間に1度など定期的かつ頻繁に熊手のような道具で攪拌し、
発酵のリスクを避けることが重要です。
機械乾燥(マシンドライ・メカニカルドライ)
金属製のドラムに無数の穴があいており、
パーチメントをいれた状態でゆっくりと回転します。
ドラム内にヒーターから熱風が送り込まれることで、
6時間から最大20時間ほど乾燥されます。
機械乾燥の場合は、熱風温度の調節が重要です。
豆の温度が40℃を超えることがないように細心の注意が払われます。
高温すぎると豆が変色し、液体にしたときの香味成分を失ってしまいます。
適切な乾燥機を使用しなかった場合、燃料の匂いが移ったり、
乾燥ムラができる危険があります。
天日乾燥の最終段階で、短時間、機械乾燥が使用されることもあります。
乾燥後の脱殻処理について
乾燥工程を終えたドライチェリー(ナチュラル・非水洗式)、
またはパーチメント(ウォッシュド・水洗式)は、
サイロとよばれる風通しのよい貯蔵庫で寝かせることで、
水分値が整えられ、状態が安定します。
この状態で保管され、注文に応じて脱殻し、生豆に加工して、
さらに選別してから袋詰めされます。
ナチュラルの場合、ドライチェリーは、圧迫脱殻機に通されて、
乾いた外皮と果肉を取り除かれます。
アフリカなどでは、木製の臼を使った伝統的な方法が用いられています。
ウォッシュドの場合、パーチメントを取り除く
脱殻機へ運ばれて、生豆に加工されます。
生豆に加工された後は、比重選別やスクリーン選別などで
等級分けをされていきます。